試合中に試合が突然止まり、主審がピッチ脇のモニターを確認しに行く場面を見たことがある方は多いと思います。あの「映像確認」の仕組みがVARです。

W杯2026ではVARの介入範囲が前回大会から拡大され、これまでと異なる場面でも映像確認が入るようになりました。本記事では、VARの基本的な仕組みから今大会の新ルールまでを、初心者の方にもわかりやすく整理します。

VARとは?基本情報を整理

VARは「ビデオアシスタントレフェリー」の略称です。フィールドとは別の場所で複数のアングルの試合映像を見ながら主審をサポートする審判員のことをVARといいます。いわゆるビデオ判定のようなシステムですが、VARはすべての事象に介入するわけではなく、役割はあくまでも主審の「サポート」です。

重要な点は、VARは判定を下す主体ではないということです。

VARを担当する審判員が自身に問うことは「その判定が正しかったのか?」ではなく「その判定ははっきりとした明白な間違いであったのか?」です。最終決定はあくまで主審が行います。

VARはなぜW杯2026で注目されているのですか?

2026年に北中米で開催されるFIFAワールドカップでは、試合のテンポアップや公平性を保つための大幅なルール変更が導入されています。VARの介入範囲もそのひとつとして拡大されました。

VAR導入前、主審が下した判定の93%は正確であったとされていましたが、VAR導入後には98.9%にアップしているという統計があります。W杯2026ではこの精度をさらに高めることを目指し、介入できる場面が増えています。

VARが介入する4つの基本事象

W杯2026においても、VARが介入できる基本的な事象は以下の4つです。

フィールドでの判定についてVARが介入するのは、①「得点かどうか」②「PKかどうか」③「退場かどうか」④「警告・退場の人間違い」の4つのみとなり、これらのなかで「はっきりとした明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」があった場合にVARの介入が入ります。

それぞれをわかりやすく説明します。

① 得点かどうか: ゴールが認められるべきか、オフサイドやハンドなど無効になるべき事象がなかったかを確認します。三笘薫選手がW杯カタール大会で見せた「三笘の1ミリ」のような、センチ単位の判定もVARがあるからこそ可能です。

② PKかどうか: ペナルティエリア内での反則がPKに値するか確認します。PKかどうかはノックアウトステージの延長・PK戦とも密接に関わります。延長戦とPK戦の仕組みについては別の記事で整理しています。

③ 退場かどうか: レッドカード相当のファウルや危険なプレーがあったか確認します。退場によって数的不利になるチームが生まれるため、試合全体に大きく影響します。

④ 人間違い: カードを受けるべき選手を誤って別の選手に提示してしまった場合に修正します。

W杯2026で拡大されたVAR介入範囲(新ルール)

今大会では、これまで介入対象外だった事象が新たにVARの対象に加わりました。

これまで対象だった「得点」「PK」「一発退場」「人間違い」の4つの事象に加え、新たに「2枚目のイエローカードによる退場」「誤って与えられたコーナーキック(CK)」「セットプレー再開前のファウル」「警告・退場における人間違いの適用拡大」のケースでもVARのチェックおよび介入が可能となりました。

それぞれの意味を整理します。

新ルール①:2枚目のイエローカードによる退場

「明らかに誤った2枚目の警告による退場」が新たにVARの介入対象に加わりました。ただし、VARの介入基準「はっきりとした明白な間違い」または「見逃された重大な事象」を修正すること自体は変わっておらず、今回変更されたのは介入できる対象の一部が追加された点です。イエローカード単体へのVAR介入は引き続き対象外です。

試合を左右する累積警告による退場が明らかな誤りだった場合に修正できるようになりました。

新ルール②:誤って与えられたコーナーキック

プレー再開を遅らせずに直ちに修正できる場合に限り、誤って与えられたコーナーキック判定に介入できるようになりました。

試合の流れを止めない範囲で、明らかな判定ミスを素早く訂正する仕組みです。

新ルール③:セットプレー再開前のファウル

コーナーキックやフリーキックなどで、ボールが蹴り出される(インプレーになる)前に攻撃側が犯した反則についても、ゴールなどに直結する場合はVARが介入し、やり直しや適切な懲戒処分を与えることが明確化されました。

セットプレーからのゴール直前にファウルがあった場合も、VAR確認の対象になります。

新ルール④:人間違いの適用拡大

カードを提示すべき選手を誤った際、より迅速かつ正確に修正するための適用が拡大されました。

今大会ではすでにこの新ルールが適用される場面が起きており、W杯グループステージの試合で史上初となる誤認によるVAR介入が実施されました。選手がファウルを受けた際に誰がファウルを犯したかの判定が誤っており、VARによってイエローカードが取り消され、正しい選手に警告が与えられました。

VARの介入から判定までの流れ

VARが実際にどのように機能するかの基本的な流れです。

VARがレビューが必要と判断したときは、主審にレビューをすることを提案します。主審は四角のTVモニターの形を示す「TVシグナル」を出して、VARの介入を周知します。その後、主審はVARオンリーレビューまたはオンフィールドレビューを行い、最終的な判定を下します。

2つのレビュー方式の違いをわかりやすく整理します。

VARオンリーレビュー: VARからの映像情報のみで主審が判断する方式。オフサイドかどうか、ボールがラインを超えたかどうかなど、客観的な事実として映像から確認できる事象に使います。

オンフィールドレビュー(OFR): 主審自身がピッチ脇のモニターまで歩いて行き映像を確認する方式。ファウルの強度や意図など、主観的な判断が必要な事象に使います。試合中に主審がモニターに向かって歩いていく場面が観客席やテレビから見えます。

VARと試合予想・観戦の関係

VARを知っておくと、観戦中に試合が止まったときに何が起きているかがわかります。

VAR確認中は試合が止まる: VARの確認中はプレーが止まっており、得点が確定するまでに数分かかることがあります。この間に試合の流れが変わることもあります。ライブオッズはVARの確認中でも変動することがあり、確認の結果によって大きく動く場面があります。ライブオッズの読み方についてはライブ予想の解説記事も参考になります。

退場取り消しの可能性: 新ルールにより2枚目のイエローカードにもVARが介入できるようになったため、「退場確定か?」と思われた場面が覆ることがあります。スタメン構成や数的不利の読み方についてはスタメン発表後に確認したいポイントの記事と組み合わせて理解しておくと便利です。

グループステージの得失点差への影響: VARによってゴールが認められたり取り消されたりすることで、グループステージの得失点差や突破条件が変わることがあります。突破条件と得失点差の仕組みについてはグループステージ突破条件の解説記事を参考にしてください。

ノックアウトステージのPK判定: ラウンド32以降の決勝トーナメントでは、PKかどうかの判定が試合全体に影響します。特に延長戦でのPK判定は、PK戦への突入可能性とも絡む非常に重要な局面です。ラウンド32の仕組みと延長・PK戦のルールもあわせて把握しておくと観戦が深まります。

VARの注意点:「すべてが正しく判定される」わけではない

VARはすべての事象に介入するわけではなく、「はっきりとした、明白な間違い」をなくすことがVARの基本的な考え方です。10人のうち10人全員または9人か、8人まで含むかという人が「はっきりとした、明白な間違い」だと思う判定でないと、VARは介入しません。判定に対する意見が半々に別れるような場合においてはVARは介入しません。

つまり、「あのプレーはファウルでは?」「これはオフサイドでは?」と思っても、VARが入らないことは多くあります。それはVARの介入基準を満たしていないからであり、判定が「明白な誤りではない」と判断されたことを意味します。

また、監督や選手がVARの判定を要求することはできません。バレーボールのチャレンジシステムとは異なり、チーム側からVARを起動させる手段はありません。

関連するワールドカップ2026の試合ページ

VARが実際に働く決勝トーナメントの各対戦カードは、トラストダイスの試合予想ページで確認できます。ラウンド32以降の試合はVARが特に重要な局面を生みやすく、試合前の予想と観戦をあわせて楽しむ際の参考になります。

まとめ

W杯2026のVARについて、要点をまとめます。

  • VARとは、映像で試合を確認して主審をサポートする審判員(およびシステム)のこと
  • 最終決定は常に主審。VARは「明白な間違いをなくす」ことが目的
  • 基本的な介入事象は①得点 ②PK ③退場 ④人間違いの4つ
  • W杯2026から新たに2枚目のイエローカード・誤ったCK・セットプレー前のファウル・人間違いの適用拡大が対象に加わった
  • 主審がモニターを見に行く「オンフィールドレビュー」と、映像だけで確認する「VARオンリーレビュー」の2種類がある
  • VARはすべてのプレーに介入するわけではなく、「グレーゾーン」にはVARが入らない
  • 監督・選手からVARを要求することはできない

FAQ

VARとは何ですか?

VARとは「ビデオアシスタントレフェリー(Video Assistant Referee)」の略で、試合映像を確認しながら主審をサポートする審判員のことです。ピッチ上ではなく、別室(ビデオオペレーションルーム)で複数のカメラ映像を監視し、明白な判定ミスがあった場合のみ主審に連絡して修正を提案します。最終決定を下すのは常に主審です。

VARはどのような場面で介入しますか?

基本的には①得点の有無、②PKかどうか、③退場かどうか、④警告・退場の人間違いの4つの事象に限り介入します。W杯2026から新たに「2枚目のイエローカードによる退場」「誤ったコーナーキック判定」「セットプレー再開前のファウル」にも介入できるようになりました。いずれも「はっきりとした明白な間違い」がある場合にのみ介入し、微妙な判定にはVARは介入しません。

VARが入ると必ず判定が変わりますか?

いいえ。VARが確認した結果、「明白な誤りはなかった」と判断されれば元の判定がそのまま維持されます。VARが介入してモニター確認を行っても、最終的に判定が変わらないことも多くあります。

主審がピッチ脇のモニターを見に行くのはどういうときですか?

主審が自らモニターを確認する「オンフィールドレビュー」が行われているときです。ファウルの強度や意図など、主観的な判断が必要な事象に使われます。一方、オフサイドの位置確認など客観的な事実確認はVARの映像だけで処理される「VARオンリーレビュー」が行われ、この場合は主審がモニターに向かいません。

選手や監督がVARを要求することはできますか?

いいえ。VARは主審とVAR担当審判員との間で自動的に行われる仕組みであり、チームの監督や選手がVARの起動を要求することはできません。これはバレーボールなどのビデオ判定チャレンジシステムとは異なる点です。

トラストダイスでVARが影響する試合を確認できますか?

はい。トラストダイスでは、VARが特に重要な役割を果たすラウンド32以降の各対戦カードを含む、ワールドカップ2026の全試合予想ページから各試合の情報を確認できます。得点・PK・退場など試合を左右する判定が多い決勝トーナメントの各対戦カードも掲載されています。